ゆとりるのはてなブログ

ポケモンのダブルバトルで遊んだり、このゆび杯を主催したり、小説を書いたりしてます・w・b

しっぽさまとアルトマーレの災厄 〜 第二十四話 竜星群殴り込み艦隊


第二十四話 竜星群殴り込み艦隊

「アンヤを撃退すれば、アルトマーレを襲う竜星群の脅威は去ります。そして撃退の条件は、ここからも見えるあの黒い渦の中心に総攻撃をしかけ、さらに『本体』を引き摺り出して一斉に叩くことです。アンヤは黒い渦の形をしていますが、渦の中心に一定以上の損傷を与えると、その中心から巨大なカメテテのような五本の指を持った『本体』が現れます。『本体』からは竜星群とあわせて破壊光線も放たれますので、それらを掻い潜って攻撃を続け、五本の指全てを破壊すれば撃退成功です」

 イーユイが捕捉する。
「昔ガラルにアンヤが現れたときは、ガラルの伝説のわんこたちが同じ流れで倒してた。オレたちの仲間がしっかりと見てきた情報だから、間違いない」
「これだけのみなさんに集まっていただいたのです。我々であれば、伝説ポケモンの力を借りずとも、勝利を勝ち取ることができるでしょう!」
 ラティたちから、一気に歓声が上がる。
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」

――

「お前の彼氏、持ち上げんの上手いな」
 出番を終えたイーユイが、脇で待機しているグレンを茶化す。
「あんなん、彼氏のうちに入んねーよ」
 ホタルは作戦の説明を続けている。

 続いて、班分けについてご説明します。事前にお話ししたとおり、みなさんを大きく東西南北の四隊に分け、その四隊それぞれの中でさらに火力班三つ、壁班二つ、補佐班一つに分けさせていただきました。
 火力班のみなさんは、第一班から主力技で攻撃していただきます。負傷したり、ご自身の「りゅうせいぐん」でとくこうが下がった方は、すぐさま後退して下さい。そして、後続の第二班・第三班が矢継ぎ早に攻撃します。後退は班単位ではなく、お一人お一人個別に判断して下がって構いません。各方位ごとに常に十人ほどが攻撃し続けるのが理想です。そのため、第二班・第三班の方は、視界内で誰かが後退したら、または全体を見て攻撃している人数が十人よりも少ないと感じたら、積極的に前へ出てください。
 なお、攻撃技ですが、「ラスターパージ」のとくぼう下降や、「ミストボール」のとくこう下降の効果はあまり見込めません。アンヤは自身の竜星群によるとくこう下降を無視していることから、何かしらの特性が働いている可能性が高いためです。そこで、こちらからも「りゅうせいぐん」で攻めるのを推奨します。数の利を活かし三班制で常に交代できますので、とくこう下降は恐れずに、常に最大火力を押し付けましょう。

ホウエンから、キュウコン三人で来てるんだってな。もう一人はどうした?」
「ハナは、チオンと一緒に北へ……アンヤから遠ざかってる。ただこの作戦が決まってから、ハナだけラティに拾ってもらって、今からこっちに来るんだと」

 続いて壁班のみなさんですが、「ひかりのかべ」を常に広域展開し、他のみなさんや、アルトマーレの街への被害を軽減します。アンヤの竜星群に対して壁が機能するのは、初期対応で奮闘いただいたラテオ様のご活躍により、実証されております。こちらも二班ありますので、負傷した場合は個別に速やかに後退してください。第二班の方は、常に壁の状況を注視し、綻びがあれば率先して補強に回ってください。
 壁を維持する優先度は、一に自分自身、二に味方、三にアルトマーレの街です。アンヤの体力が未知数ということもあり、街を守りながら戦うほどの余裕は、残念ながらありません。多少の街の被害はやむを得ないと、お考えください。

「そのハナってやつだけこっちに来るんなら、チオはそのまま北へ向かうんだな。走るのむっちゃ遅いけど」
「チオンってヤツは、レベッカ……うちのクレベースに乗って移動してる。万が一アンヤを倒せなくても、逃げ切って竜星群を止めるらしい」

 班分けの最後は、補佐班です。補佐班のみなさんは、負傷された方の回復と、戦況に大きな変化があったときの「ゆめうつし」の発信、加えて手が空いた場合は火力班への「てだすけ」をお願いします。なお、「ゆめうつし」の受信は各班の班長のみとし、班長の方は班員のみなさんに口頭で連絡事項をお伝えください。「ゆめうつし」と口頭とで連絡を繋ぐことで、視界が制限される「ゆめうつし」中の隙を最小限に抑えます。さらに隙を補うため、各班の班長には「みがわり」を推奨します。

「『りゅうせいぐん』に『ひかりのかべ』に『てだすけ』か……アイツら器用で羨ましいぜ」
「アタシら『てだすけ』ってガラじゃねーだろ」

 そして、この三種類の班とは別に、指揮班というものを設けます。これは指揮官であるイーユイさん、参謀である私ホタル、そしてキュウコンのグレンで構成される特別な班です。数人の専属補佐班と共に前線を巡回し、適宜指示を出させていただきます。そしてなにより……ラテア様とラテオ様も、この指揮班にご助力いただくことになりました。

 ラテアとラテオの参戦に、再び怒涛の歓声が上がる。
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」

「こいつらうっせ。しかも、あんなガキどもが最前線って、正気かよ?」
「ラテアとラテオから『前に出たい』っつったんだと。最初にアンヤが暴れ始めたときも、迷わず真っ先に飛び出したし、アイツらイイ根性してるぜ」
「それを買って、あの親バカ王様も許可したってことか。ラティたちって臆病とか控えめなやつが多いかと思ってたけど、けっこう肝座ってるんだな」

「私もがんばって応援するから、恩返しいっしょによろしくー!」
「じっじさーん、ばっばさーん、ありがとー!」
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」

「そういや、あの二人は『歌がうまくてライブハイシンで人気』だって、サメハダーが言ってたな」
「前線に出りゃ士気も上がるってか。この短時間で、よくこんな噛み合った作戦を考えたもんだ」

 なお、今回東西南北の四隊に分けてはいますが、常に混戦が予想されます。隊の横断も躊躇なく行なってください。例えば、「東隊の壁班が負傷して引き、南隊の壁班が交代する」といったように、臨機応変に動いていただいて構いません。では、作戦の説明は以上です……

「お、そろそろ終わるな。じゃアタシも……」
「どこ行くんだ? 打ち合わせに、アンタの出番はなかっただろ」
「ただの景気付けだ。親バカ王様には、話つけてる」

 今からみなさんは、所定の持ち場へ移動してください。四方の部隊の移動と準備が完了次第、私が打ち上げる「だいもんじ」を合図に、一斉に作戦を開始します。次の竜星群が降り始めるまでまだ時間に余裕がありますが、こちらから攻撃を始めれば、時を待たずに反撃してくるのは必至です。気を抜かずに、作戦に臨みましょう。ここまでご清聴いただき、ありがとうござ……

「おい、てめーら!」
 ホタルが締めくくろうとした壇上に、グレンが強引に割り込む。突然の大声に対応しきれず、中継の「ゆめうつし」にキーンという雑音が入る。
「アタシは、ホウエン番長連合総代グレンだ!」
思わぬ乱入に、ラティたちもざわついている。

「この『竜星群殴り込み艦隊』のカチコミ。絶対に、成功させんぞおおお!」
「りゅっ……なんだそのふざけた……」
グレンを止めようとするホタルに、さらにラテアとラテオが割り込む。

「このキュウコンさんは、最強のバンチョーさんなの!」
「りゅーせーぐん! なぐりこみ! かっこいいい!」
「せーのっ」
二人は声を揃えて叫ぶ。
「「竜星群殴り込み艦隊っ、がんばっちゃおおおお!」」

「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」
「ああ、うちの子かわいい」
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」

――

Calendar
7/11 ラテアとラテオがアルトマーレの砂浜に落下
7/17 イチが乗っていた船が沈む
7/18 ホタルたちがホウエンからアルトマーレへ出発
7/19 城の一室でミツ側近がイチ側近に災厄の発動を提案
7/21 アルトマーレの港町に到着し酒場で盛り上がる
7/22 漁村でラテアとラテオが復帰
7/23 災厄が発動 / ホタルたちがラティ王国の一団と合流
7/24 アンヤ撃退作戦の集会 → 竜星群殴り込み艦隊のカチコミ Update!

Comment
 「殴り込み艦隊」の元ネタは、同名の昭和映画と、アニメ「トップをねらえ!」でそれをオマージュした「銀河中心殴り込み艦隊」です。ポケモンで「艦隊」って……改めて考えたらむちゃくちゃですね。

Next
 第二十五話 王こそ前へ出よ