ゆとりるのはてなブログ

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しっぽさまとアルトマーレの災厄 〜 第三十話 真・竜星群殴り込み艦隊


第三十話 真・竜星群殴り込み艦隊

 アンヤの巨大な暗雲が漂うすぐ外側。次から次へと集まってくるアルトマーレのポケモンたちに、ラティ王が「ゆめうつし」を通じて訴えかける。

「駆けつけてくださった、アルトマーレのポケモンのみなさん。私は、ホウエン地方にあるラティオスラティアスの国の国王、ラテザエモンと申す者です。我々の『ゆめうつし』という技で、みなさんに話しかけています」
「なんだこれ。声と風景が……見える、見えるぞ!」
ラティオスラティアスって、すっげえ強いヤツらじゃん」
「ラテ……ザエモン? えっ、ザエモン?」

「今この暗闇の雲の中では、我が国のラティたち及びその協力者が、竜星群の元凶であるアンヤというポケモンと戦っています。しかしアンヤの力は強大です。この戦いに勝つには、ぜひともみなさんのご協力が不可欠です」
「ああ、もちろんそのために来たんだ!」
「ここは私たちの故郷です。私たちにも戦わせてください!」
「アンヤっつーんか、ぜってーぶっ飛ばすかんな」

「みなさん、ありがとうございます。そこで、暗雲の中で戦っていただくにあたって、二つだけお願いしたいことがあります。みなさんの命を守るための、大事なお願いです。まず一つ目。ぜひとも、攻撃一辺倒にはならず、『ご自身の身を守ること』を常に意識してください。中では、アンヤの強力な竜星群と破壊光線が頻繁に襲ってきます。我々ラティたちができるだけ攻撃を引きつけ、『ひかりのかべ』で軽減しますが、それでも一撃で瀕死に追い込まれるかもしれません。『ご自身の身を守ること』をぜひお忘れなきよう、お願いします」
「身を守るか……わかった!」
「竜星群と破壊光線なら、『ひかりのかべ』は助かるな」
「ラティたち優しくない?」

「そして、二つ目のお願い。それは、傷ついたときの撤退の方法です。暗雲の外に引き返すことができればそれでも構いませんが、怪我や乱戦でうまくいかないかもしれません。そのときは、勇気を出して、そのまま地上へ落ちてください。地上では、我々ラティ王国の者だけでなく、同じくアルトマーレのポケモンのみなさんが、しっかりと受け止める体制を整えています。実際に私も落ちてみましたが、怪我一つなく拾ってもらえました」
「逃げ方まで考えてくれてるのか」
「あとは全力で攻撃するだけだな!」
「ザエモン自分で落ちてみたの? すっげ!」

「ご自身の身を守り、地上にも撤退できる。お願いしたいことは以上です。みなさんのご協力を得た『真・竜星群殴り込み艦隊』であれば、必ずやアンヤに打ち勝つことができます。アルトマーレの明るい未来と新しい時代のために、共に戦いましょう!」

――

「「「日輪の力を借りて、今必殺の……ファイヤードリル!」」」

「エダアアアアア!」
「ヤッタァー! おてての四本目、やっつけたー!」
「倒したらすぐ来る!」
「そだった!」
 アンヤの放つ極太の破壊光線を、ラテアとイーユイは間一髪で避ける。

「イーユイ、あと何発いける?」
「振り絞って……三だ……」
「その三、大事にとっとけ。新人がどこ狙えばいいか目印になっからな。少しずつ時間あけて、ぶっぱなずぞ」
「オレらの必殺技は目立つからな。ただ……見栄張って三っつったが、ぶっちゃけ飛んでるのもしんどい」
「ラテアは……まだ飛べるか?」
「まだまだだいじょぶ!」
「よし、イーユイを抱っこしてやってくれ。お前らの底ナシの体力が、羨ましいぜ」
「うん、わかった!」
「助かる……」

 イーユイ自ら、ラテアの手元にふよふよと収まる。
「イーユイさん、あったかくてかわいいー!」
「だろ。よく言われる。ミヨミヨー」
「それ、人間に抱っこさせたら、ゲンナマもらえるんじゃね?」
「なんだよゲンナマって。それに、人間に抱っことか気持ち悪りいし、絶対ヤだ」

――

「東隊より、四本目の指も撃破!」
 補佐班のラティオスが、ホタルに報告する。
「やったな。こちらでも目視で確認した。あの炎の光、いい狼煙になっているが……グレンとイーユイがやってるのか」
「あそこまで集中攻撃できてれば、勝利は目前ですね!」
「ただし、油断はするな。『本体』が出てきたときと同じように、最後の最後でさらにアンヤの攻撃が激化するかもしれん。各隊補佐班へ『ゆめうつし』で通達。攻撃は現地のポケモンに任せ、私たちは守りを固める。各隊火力の中で『ひかりのかべ』が使える者は壁へ、『いやしのはどう』が使える者は補佐へ回れ」

「ホタル様、海に面した南側から援軍に来てくださっている方々が、減ってきております。四方の編成は、このままでもよろしいでしょうか?」
「なるほど……ありがとうハナ。最後の追い込みに、再編成を考えるべきだな。補佐班、『ゆめうつし』で四方からの援軍の様子を見せてもらえるか?」
「わかりました。準備ができた隊から順次繋ぎます」

 そこへ、他のラティアスが報告に来る。
「グレンさんたちの回復に向かいましたが、『他の治療に当たれ』と突き返されました。あのお二人、ずっと出ずっぱりですよね。大丈夫でしょうか?」
「せっかくの気遣いをアイツら……申し訳ない、代わってお詫びする。あの二人も、マズイと思ったら自分で帰ってくるだろうから、もう野放しにしておこう」

「北と東から、援軍の様子の『ゆめうつし』来ます。順にお見せしますね……あ、西からも!」
「ありがとう、どんどん繋いでくれ」

――

 暗闇の雲の内側に入ってくるポケモンの一団が、グレンの視界に映る。
「いい数の応援が来た……」
「最後の仕事だな……」
「ちゃんと覚えてっか? イーユイ、アレをやるぞ」
「ああ、いいぜ。言う順番はアンタからだからな」

 イーユイは、呼吸を整え、ラテアの腕から飛び出した。そして、アンヤの「本体」に向かって急加速する。
「ラテアも、最後のひとっ飛び頼む!」
「いぇーい!」
 元気よくイーユイを追うラテアの背中の上で、グレンは、改めてハナから教えてもらったことを反芻していた。
「しっぽの先に集中っつってたな……よし、いける!」
 グレンとイーユイは、互いに目配せして息を合わせる。

「螺旋の炎を纏いし竜の!」
「描く軌跡は道標!」

 グレンとイーユイの口上が、暗雲の中に響き渡る。

「勝利を掴めと雄叫び上げて!」
「紅蓮の光が闇夜を穿つ!」

 多くのポケモンたちが、何事かと注目する。

「ねっぷう……早業九連!」
 九筋の炎の旋風が、暴れ狂う八股の竜のようにしなる。しっぽからさらに力の供給を受けた火焔の竜たちは、我先にと一斉に加速し、螺旋を描きながらアンヤへと向かう。

「かーらーのー! ダイナミック……フル……オーバーヒート!」
 イーユイも、巨大な火球を作り出し、さらに全開の「タマオーラ」を纏わせる。残る全ての力を注ぎ込み、紅色に輝く炎の珠をアンヤの最後の指へと解き放つ。

「ギィガァ……ドリルゥ……」
「シャァニングゥ……」
「「「ファイヤードリル!!」」」

 何が何だかよくわからない、なんかもういろいろすごい感じになった巨大な炎の槍が、アンヤの最後の指を直撃する。
「エタアアアアアアアアアア!」
 着弾点に向かって周りの空気が一瞬吸い込まれたかと思うと、瞬く間に凄まじい爆風が巻き起こる。その膨大な熱量は、舞い狂う無数の火の粉を、暗闇の雲に抗うかのように白く激しく輝かせた。

 アンヤを倒すには至らないものの、螺旋の炎の圧倒的な光は、周りのポケモンたちに勝利を確信させるほど、力強かった。
「ラティたち、あんなすげえ技使えんのか!」
「これなら勝てる……勝てるぞ!」
「俺たちも負けてられん、いくぞおおお!」

 反撃の破壊光線がグレンたちを襲うが、もはやかする気配さえない。ラテアもイーユイも、最低限の動きで避けられるようになっていた。
「これで……アタシらは……打ち止めだ……」
「ミヨミヨ……」
 イーユイは、ラテアの腕に帰ってくる余力さえ残っておらず、ゆらゆらと高度を落とす。ラテアは慌ててイーユイを受け止める。
「九連……やべ……」
 グレンも体力の消耗が激しく、まともに立っていられない。

「はぁはぁ……王様ん……とこ……」
「うん、わかった!」
 ラテアは、ラティ王のいる方向を「ゆめうつし」の念波で察知し、勢いよく飛ぶ。
「元気……若さ……」

――

Calendar
7/11 ラテアとラテオがアルトマーレの砂浜に落下
7/17 イチが乗っていた船が沈む
7/18 ホタルたちがホウエンからアルトマーレへ出発
7/19 城の一室でミツ側近がイチ側近に災厄の発動を提案
7/21 アルトマーレの港町に到着し酒場で盛り上がる
7/22 漁村でラテアとラテオが復帰
7/23 災厄が発動 / ホタルたちがラティ王国の一団と合流
7/24 竜星群殴り込み艦隊のカチコミ → 真・竜星群殴り込み艦隊のカチコミ Update!

Comment
 イーユイをミヨミヨだっこできる「イーユイカフェ」をすると、「タマオーラ」でみんな気分が悪くなって、すぐ営業停止になります。

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