ゆとりるのはてなブログ

ポケモンのダブルバトルで遊んだり、このゆび杯を主催したり、小説を書いたりしてます・w・b

しっぽさまとアルトマーレの災厄 〜 第三十二話 海は涙を捨てる場所


第三十二話 海は涙を捨てる場所

「パオ! ディン! やっとアンヤをぶっ飛ばせたぜ!」
 アルトマーレの城下町まで降りてきたイーユイが、これ見よがしに勝利を報告する。
「ああ見ていた。まさか本当に倒せるとは、思ってもみなかったぞ」
「必殺のファイヤードリル、お前たちにも見せたかったなー」

「わあ、みんな集まってる!」
「パオジサーン、あそぼー!」
「お、ラティのちびっこたちも来たみてえだな」

 ラテアとラテオと一緒に、ホタル・ハナ・グレンの三人も現れる。
「げ……あのキュウコンたちも一緒なのか」
「なんだよその言い草は。お前らもアンヤと一緒に、ぶっ飛ばしてやってもいーんだぜ?」
「パオジアン様、ディンルー様、お久しゅうございます」
「キミたちも、地上でみんなの救援を手伝ってくれたと聞いている。そのお礼を言いに来たんだ。ありがとう」

 さらに、チオンジェンを乗せたレベッカも現れる。
「チオンさんの言った通り、ほんとにあの化け物を倒せちゃってるね。さすがはおくりび山とラティ王国のみんなだ」
「それと、ここのポケモンさんたちの協力よね。遠くからどんどんポケモンさんたちが集まっていくのが見えたから、きっと大丈夫だろうって思って。だからレベッカさんに、先にもう引き返しましょうってお願いしてたの。あとね、ラティアスの女王様にお会いできたのよ。ほんとお美しかったわ。私もあと三十若かったら、引けを取らないんだけどねー」

「イーユイ様、パオジアン様とディンルー様、それにチオン様……みなさまが一ヶ所にお集まりになられて、大丈夫なのでしょうか。アンヤが現れたのは、みなさんが集まったから……でございましたよね」
「ああ、それは大丈夫だよ。次のアンヤが現れるまで一ヶ月くらいはかかるんだ。それまでに、僕とイーユイちゃんがさっさと立ち去るから、僕たちのせいでまたアンヤが現れることはない」
「ワシらの目的は、すべてのポケモンたちの平和を監視することだからな。また全国を巡回する旅に出なければ」

「全国を巡回なさる……わたくしたちとは規模が違いますわね。頭が上がりません」
「お嬢さんも、全国を巡っているのですか?」
「わたくしたちおくりび山のキュウコンは、ホウエン地方の平和を守っているのです」
「おくりび山王国という国を作り、ホウエン地方で起こる様々な問題を解決しようと、努力している」
「ワシらは全国を広く浅く監視し、貴様たちはホウエン地方に密着して監視する……形は違えど、ワシらは同胞というわけか」
「そう仰っていただけるのでしたら、光栄でございます」

「パオジサンたちも、バンチョーのみんなも、かっこいいね!」
「そだね。私たちも、何かできることがあったらいいのに……」
「もしラテアたちもなんかするんなら、めんどくせー決まりとかは作らない方がいいぜ。そのせいで困る連中が出てくるかもしんないからよ」
「決まりが本当にいるのかどうか、ちゃんと考えるのは大事だな。おくりび山の決まり……『千歳の掟』については、私に任せてもらおう」
「ああ、期待して待ってる」

「オレたちも、アンヤの『決まり』が雑すぎて、すっげー迷惑してるからな」
「そのことなんだが……今後のアンヤの予防について、擦り合わせたいことがある」
「僕たちが穏やかに暮らせる『着地点』、見つかりそうかい?」
「ああ、善処するよ」
「やはりワシらの力になってくれるのか……それはありがたい」

――

「これからキミたち四人が散り散りになり、今後悪い人間たちに捕まらなければ、もうアンヤの竜星群は起こらない……と見ていいのか?」
「それはちょっと微妙ね。あのボールって私たちがイヤイヤっていっても無理やり捕まっちゃうことがあるから、逃げる作戦も完璧じゃない。それにもっと危ないのは、他にもう捕まっちゃってる子が何人もいるってこと。このままだと、私以外のチオンジェンちゃんたちがまた一ヶ所で解放されちゃうのは、時間の問題ね」
「お仲間の方々が、いらっしゃるのでしたね」
「オレらで犯人のアジトに乗り込んで、全員助け出してくっか」
「それいいな。また大暴れしてやろーぜ」
 乗り気のイーユイとグレンを、パオジアンが制する。
「アジトがどこにあるのか、いくつあるのか……さすがにキュウコンやラティたちでも、全部を見つけるのは難しいんじゃないかな」
「全部は難しいとしましても……さしあたって、今回のアルトマーレで悪事をお働きになった人間どもでしたら、見つけることができるのではないでしょうか」

「そこでだ。邪悪な怪物たる彼らに、このアルトマーレの海で一つ学びを得てもらう……というのはどうだろうか。ちょうど、『海は涙を捨てる場所』だしな」
「お、それ懐かしーな。おくりび山にいた頃に、よく聞かされたやつだ」
「なんだそれ。初めて聞くわ」
 ホタルの言葉に、珍しくグレンとイーユイが正反対の反応を示す。

「『海は涙を捨てる場所』と申しますのは……涙を流して過ちを悔い、そこから一つの学びを得ましたら、過ちは海に捨てて忘れる……という、おくりび山に代々伝わる教訓ですわ」
「ふむ。さしずめ『罪を憎んで、ポケモンを憎まず』……と言ったところか」
「今回で言うと、『罪を憎んで、犯人の人間を憎まず』ってことになるのかな? そこまでキュウコンはお人好しなのかい?」
「『過ちから学びを得よ』というのが『涙を捨てる』の肝要なところでございますが……何かご関係がございますのでしょうか?」
 パオジアンとハナは、ホタルの真意を伺う。

「犯人は憎いが、殺さず生かして利用するという方法もある。今後二度とアンヤの竜星群を起こさないよう、彼らにはしっかりと学びを得てもらいたいと思っているんだ。そのために、こういう『作戦』を考えてみたんだが……カクカクシキジカ

――

 ホタルの提案に、一同は諸手を挙げて賛成した。

「そうしましたら、おくりび山への帰りの航路で、ホタル様の『作戦』を実行させていただきましょう」
「ああ。ラテアとラテオも世話になったな。おくりび山に帰ったら、手紙を出すよ」
「うん、おじさんもおばさんもありがとー!」
「私、大きくなったら、バンチョーさんみたいなかっこいいお姉さんになります!」
「楽しみにしてる。アタシは、ホウエンのキンセツ学園ってとこにいるから、こっちくることがあったら遊びに来な」
「わかりました!」
「イーユイもだ。お前ら世界中回ってんなら、ホウエンに来ることもあんだろ」
「ああ。キンセツ学園だな、カチコミに行ってやんよ!」
「アタシの子分たちはつえーぜ。吠え面かくなよ!」

「じゃあ、そろそろ出発するかい?」
レベッカが、背中に乗るように促す。
「あ、そうだ。途中で、港町のお土産屋っつーとこに寄ってくれよ」
「学園のみなさんに、お土産ですの?」
「それよりももっと大事なもんだ。ハナにも付き合ってもらうからな」

――

Calendar
7/11 ラテアとラテオがアルトマーレの砂浜に落下
7/17 イチが乗っていた船が沈む
7/18 ホタルたちがホウエンからアルトマーレへ出発
7/19 城の一室でミツ側近がイチ側近に災厄の発動を提案
7/21 アルトマーレの港町に到着し酒場で盛り上がる
7/22 漁村でラテアとラテオが復帰
7/23 災厄が発動 / ホタルたちがラティ王国の一団と合流
7/24 真・竜星群殴り込み艦隊がアンヤに勝利

――

アンヤが瀕死になっているだと
ビームのスキームをやっとアップデートしたばかりだと言うのに

このログは
あの時代でこれだけ削るには
伝説ポケモンの力を借りるしかないはずだが
しかもこんな小さな島で

ダメージ元はどうなっている
イーユイからは微々たるものだから捨て置こう
地元のポケモンから
一発の被ダメージは小さいが
被攻撃回数が二十万オーバー
想定した最大値の十倍だと

しかしなぜアンヤが起動した
さして問題は起こっていないようだが
四幸の教育がまだ足りないか
いや
ボールの痕跡
そうか人間たちが意図的に集めたのか
進歩が良からぬ方に進んでいるな

アンヤの起動サーキットにはまだ欠陥が多いな
慣れない分野で手探りだが
世界をより良きものにするために

それにしても
ポケモンはともかく
人間は
救うに値しないということなのか

――

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 第三十三話 しかもこのようなお洒落なお店で