ゆとりるのはてなブログ

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しっぽさまとアルトマーレの災厄 〜 第二十三話 そっちの二人も黙っててくれ


第二十三話 そっちの二人も黙っててくれ

「あなたの目的は、街を破壊する……ではないんですよね。どういったご用でしょうか?」
ホタルは言葉を一つ一つ選びながら、イーユイの真意を測る。
「そんなに警戒すんなって。まあ、バトル好きっつうのをパオから聞いてんなら、しゃあないけどさ。勝手に個人情報もらすなって感じだよな」

「街壊すんじゃないんなら、ケンカでもしにきたってのか?」
「お、アンタがディンを倒したっていう、変態ヒヒダルマキュウコンか」
ホウエン番長連合総代グレンだ。ダルマとの火力勝負でも負けねえぜ」
「バンチョーさんかっこいい!」
「バンチョーやっちゃえー!」
「だけど、今はお前とケンカしてる場合じゃねえ。大事な大事な、ご休憩の時間だ」
「ああ、これからアンヤを木っ端微塵にするのに、ヘトヘトじゃあ意味ねえからな」
「ということは、あなたがここへ来たのは……」
「もちろん。あの調子こいてるポンコツ神様を、ぶっ倒すために決まってんだろ!」

――

 ホタル・グレン・ラテア・ラテオに、イーユイを加えた五人で、円陣を組む。

「オレの特性『タマオーラ』は、オレ以外の周りみんなのとくぼうを下げる。アンヤの特殊耐久を落とせるから、アンタらも殴るなら特殊技の方がいい」
「私たちキュウコンの『ひでり』と合わせて炎で攻撃すれば、三人全員の火力を底上げできるというわけか」
「ああ、最高にアツい組み合わせだ。ただ、アンタらのとくぼうも下がって、アンヤの竜星群もむちゃくちゃ痛いから、気をつけな」
「『ノーガード』で殴り合うってこったな。おもしれー」
「ただそれでも、オレら三人でアンヤの体力を削りきるのは、ぶっちゃけキツイ。何度もしぶとく叩かなくちゃいけねえから、本気で倒すの考えるんなら、かなりの持久戦は覚悟しねえと」
「そこで、こちらの戦力についてだ。今、ラティアスラティオスの大軍勢が、こちらに向かっているところだ。数はまだよくわからないが……」

「おじさん、連絡つきました!」
「パパたち、もうすぐくるって。ヤッタァー!」
「助かる。『ゆめうつし』で私たちにも繋げるか?」
「ちょ……パパうるさい。今おじさんと話してるから……おじさん、繋ぎますね」

「かわいいラテアあああ! かわいいラテオおおお!」
 ラテアの「ゆめうつし」を通じて、一同の視界全体にラティ王の顔が広がる。
「ほんとにいいい! 元気でえええ! よかったあああ!」

「うっせえな……なんだよこのジジイ」
 イーユイが、グレンにぼやく。
「ラテアとラテオの父ちゃんだって。超がつく親バカなんだと」
「親バカなのは、神速でわかったわ」
「ちなみに、ホタルの母ちゃんも、あれとどっこいな親バカらしいぜ」
「マジか。このイケメンも家に帰ったら『ママー!』とか言って、母ちゃんにワシャワシャ撫で回されるんかな。ウケる」
「まざこんって話は聞いたことねーけど……まだ聞いてねーだけかもな」
「二人とも黙っててくれ」
「ほーい」
「あーい」

「ホタル君、かわいい二人を見つけてくれて、ほんっとうにありがとう。流石はカエンさんのかわいいご子息だ」
「ありがとうございます。母の子かどうかは、関係ありませんが」

「お。イケメン、ツンツンしてんな。そういう年頃か?」
「アタシらが、まざこんとか余計なこと言ったから、機嫌わりーんじゃねーの?」
「おねーちゃん、まざこんってなーに?」
「ママが好きすぎて、他のことがぷーになってる人のことよ。ラテオは、おじさんみたいになっちゃダメだからね」
「うん、わかった。ぼくはママよりおねーちゃんがすきだから、おじさんみたくならない!」
「そっちの二人も黙っててくれ」
「「はーい」」

「アルトマーレの城の上空に浮かんでいる『アンヤ』というポケモンを、ご覧になりましたでしょうか。私たちは、アレを倒したいと考えております。お二人を保護してくださったアルトマーレの人間への、恩返しのためです」
「パルデア地方を壊滅させたアンヤが、アルトマーレでも暴れているようだな。かわいい子どもたちを救ってくれた恩を返すため、アンヤには大人しくなってもらうのも止むを得ないか……しかし……」
「何か、躊躇われることでも、あるのでしょうか?」
「アンヤとその僕の四人のポケモンは、人間の卑劣な行いに巻き込まれた被害者でもある。アンヤたちが人間に対して怒り、人間の街を破壊するのも、ある意味正当なものなのだ。なので本来であれば、我々が手を出すべき問題ではない」
「人間の卑劣な行い……アンヤの竜星群を仕組んだ犯人に、お心当たりがあるんですね」
「アンヤの竜星群を売り物にして、私腹を肥やしている人間たちがいるらしい。船で全国を渡り、意図的に天変地異を起こせる道具として、四人のポケモンを売っているようだ。人智を超えた兵器のように、見えるのだろうな」
「では、その人間を探し出して、四人を入れられるボールを用意させれば、アンヤを止められそうですね。彼らは専用の特別なボールでないと、収まりたくても収まれないようなのです」
「それも一つの手だが……実現は難しいと思っている。その人間たちは、もう既に船で遠くへ逃げている頃だろう。仮に、手分けして彼らを探し出したとしても、その特別なボールというのがすぐに用意できるかどうかも、定かではない」
「では、恩返しとしてアルトマーレを守るのであれば、やはりアンヤを倒すしか……」
「ふむ……」

 決断しかねるラティ王は、「ゆめうつし」に映ったラテオに目を留める。
「かわいいラテオ、そしてかわいいラテア。お前たちはどうしたい?」
「まちがぐちゃぐちゃで、ジッジさんとバッバさんがかわいそう……」
「あの竜星群はやりすぎ。だから、ぶんなぐる!」
「ぶんなぐるか……よし」
「申し訳ございません。不適切な言葉を、私たちが覚えさせてしまったようで」
「気にするな。そして、さすがはかわいい我が子たちだ。恩義に厚いお前たちの思いを、尊重することにしよう」
「と、仰いますと……」
「ああ。今そちらへ向かっている我々全員で……」

「オレらも全員で……」
「くるぞくるぞ……」
 イーユイとグレンが、揃ってうずうずしている。

「アンヤへ、総攻撃を仕掛ける」
「よしきたああああ! やっとアイツをぶっとばせる!」
「ラテア、ラテオ、カチコミいくぜ! いぇーい!」
「「いぇーい!」」

――

 翌朝。アルトマーレの城を東に臨む丘の上。

 ラティ王とともにアルトマーレに駆けつけたラティオスラティアスたちが、整然と並ぶ。その数は、悠に二百を超えている。
「こいつはすっげぇな……」
 その壮観な光景に、イーユイも圧倒されている。

「ラティ王国の皆様、初めまして。この度の作戦で参謀を務めさせていただきます、おくりび山王国王位継承一位ホタルと申します。この肩書きは、あまり好きではありませんが」
 大勢のラティたちの視線を前に、ホタルは臆することなく話を進める。ホタルの立つ壇上は、丘にいる全員に声が届き渡るよう、『ゆめうつし』によって中継されている。

「急拵えの作戦ではありますが、ぜひ一丸となってアルトマーレを守りましょう。ラテア様とラテオ様を救っていただいた人間の皆さんに、恩を返すために!」
 ラテアとラテオの名前を聞くや否や、ラティたちの歓声が一気にあがる。
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」
「うおおおおおお!」

「最初に、指揮系統についてご説明します」
 ホタルは、隣に立つラティ王に視線を向ける。
「まずは、作戦本部長ラティ王。お願い致します」
「ああ、承知した。とは言っても、本部長とは名ばかりであるので、実際の指示は参謀のホタル君と前線の指揮官、および各隊の長に従ってほしい。ただ、私が戦うと決断した以上、全ての責任は私にある。細かいことは気にせず、思う存分に力を尽くしてくれ」

「ありがとうございます。前線の指揮は、この場で唯一アンヤとの実戦経験があるイーユイさんにお願いします。しかしながら、逐次全体に指揮を出せるとは限りません。前線では『ゆめうつし』による連絡は、視界が遮られ大きな隙に繋がるため、非推奨です。重ねて、今回は四方からの全方位作戦です。イーユイさんの指揮が届かない位置にいらっしゃる場合は、各隊の隊長および班長の判断で、積極的に動いていただいて構いません……ということで、よろしいですね?」
「おう。正直オレもどこまで指示が出せるか自信がねえ。いろいろ作戦はあるが『自分の身は自分で守る』で頼む」
「ありがとうございます。では続いて、作戦の目的についてご説明します」

 ホタルは、目の前に広がる重圧を飲み込み、心地よい緊張に変えて言葉に乗せる。
「目的はただ一つ……アンヤを、撃退することです!」

――

Calendar
7/11 ラテアとラテオがアルトマーレの砂浜に落下
7/17 イチが乗っていた船が沈む
7/18 ホタルたちがホウエンからアルトマーレへ出発
7/19 城の一室でミツ側近がイチ側近に災厄の発動を提案
7/21 アルトマーレの港町に到着し酒場で盛り上がる
7/22 漁村でラテアとラテオが復帰
7/23 災厄が発動 / ホタルたちがラティ王国の一団と合流 Update!
7/24 決着のバトルとフタの戴冠式の予定 → アンヤ撃退作戦の集会 Update!

Comment
 毎回「ラティアスラティオス」と書くと文字が嵩張ってしまうので、総称して「ラティ」と書くようにしました。結果的に国名も「ラティ王国」となって、おさまりがよかったです。

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 第二十四話 竜星群殴り込み艦隊