ゆとりるのはてなブログ

ポケモンのダブルバトルで遊んだり、このゆび杯を主催したり、小説を書いたりしてます・w・b

しっぽさまとアルトマーレの災厄 〜 第二十一話 人の色恋は蜜の味


第二十一話 人の色恋は蜜の味

「あら、乗せてもらえるのなら助かるわ。でも、背中のラティちゃんたちは大丈夫かしら。レベッカさんの背中の広さ的には大丈夫かもしれないし、なんなら私がよっこらせってラティちゃんを抱っこしてあげてもいいんだど、重さ的にね。最近ちょっと間食しすぎちゃって、一日一回までって決めてるんだけど……あらやだ。男の子がいる前でこんな話しちゃって、ごめんなさいね」
「いえいえ、私のことはお気になさらず。この子たちはなかなか起きる様子もないですし、私と一緒にここに残ります」
「えっ、それでは……」
 ホタルの思わぬ提案に、ハナは驚きを隠せない。

「ハナにはすまないが、私とは別行動を頼みたい。レベッカとチオンさんと一緒に、アンヤの圏外まで移動するのを、助けてあげてほしい」
「こ、子どもたちは、どうなさるおつもりですか?」
「ラテアとラテオも私と一緒にここに残り、ラティ王国の応援が来るのを待つ。定期的に空に『だいもんじ』でも打ってれば、見つけてもらえるだろう。竜星群が再開して仮にここまで降ってきたとしても、私とグレンがいれば、子どもたちを守り抜くことくらいはできる」

「グレンさんは……ホタル様と一緒に、こちらにお残りになるのですね」
「おいホタル、アタシがレベッカと……」
「いえ、グレンさんにチオン様をお任せできるわけがございませんので、ホタル様のご判断は当然です。それにレベッカ様も、おくりび山王国にご協力いただいている方。無理を申し上げて来ていただいた中で、ここまで誠実にご助力いただいています。王国の関係者であるホタル様かわたくしがお供をするのが、然るべき礼儀です」
「礼儀ってなんだよ……」

「グレンさんのご提案もありがたいのですが、わたくしはわたくしの『役割』をしっかり果たさせていただきます。グレンさんも、しっかりお願いしますね。子どもたちやホタル様がお怪我をされるようなことがございましたら、あなたも祟って差し上げますから」
「ったく……わーったよ」

「あらあらまあまあ。いいわよ、そういう青春って感じ。人の色恋は蜜の味っていうからね、何杯でもおかわりできちゃう。男の子一人と女の子二人いると、いろいろあったりなかったりするわよね。あ、今はさらにコブちゃんも二人いて、もっとわちゃわちゃしちゃうわ」

――

 寝ているラテアとラテオを起こさないようそっと下ろし、代わりにチオンジェンがレベッカの背中に乗る。

レベッカさん、足がお速いのよね。こんなに大きなお体なのに、羨ましいわ。この竜星群お散歩、何度かしてるんだけどね。私ぜんぜん走るの速くならなくて、コツとか教えてもらえたら嬉しいわ。あ、また長話しちゃってる。空気読めなくて、ほんとごめんなさいね。急いでるんだから、早く出発した方がいいわよね」
「いえ……出発の前に、一つだけ伺いたいことがあります」
「はいはい、なんでも聞いてちょうだい。ホタルちゃんの質問なら、昔の男以外ならなんでも答えちゃうわ。昔っていっても、キュウコンさんほどは長生きしてないから、チオンジェン感覚での『昔』ね。何年くらい前なら『昔』って言うのかしら。私って最近はずっとボールに入ってたから、あんまし時間の感覚がね」

「伺いたいのは、そのボールについてです。ディンルーの話だと、みなさん四人がモンスターボールから出されることで、アンヤが召喚されるんですよね。それなら、誰かお一人がボールに入っていただくだけで、アンヤを止めれないのでしょうか? わざわざ遠くまで移動する時間も手間も、省けると思うのですが」
「それができればほんといいんだけど……普通のモンスターボールだとね、私たちは収まらないのよ。そのボールを投げる人がちゃんと信頼のおける人で、私自身が『ボールに入りたい』と思ってたとしても、なんでか飛び出ちゃうのよね。私たちの特性と相性が悪いのかしら。私たちをゲットしてた悪い人たちは、特別な赤いボールを使ってたみたいだけど」
「その特別なボールを、今から手にいれるのは……さすがに現実的ではなさそうですね。犯人の人間を、この混乱の中で探し出すのは難しそうですし」
「ホタルちゃんの言うとおり、そのボールがあればもっと早く解決できそうなんだけどね。普通にレベッカさんに走ってもらったとしても、何日もかかっちゃうでしょうし。その間に、竜星群が降り続けちゃって、人間さんの街もどんどん酷いことになっちゃうのは、やっぱりあんまり見たくないわよね」

「なあ、チオンさんよ。アタシらであのアンヤってのをぶっ倒すのは、やっぱダメなのか? パオッサンってやつの話だと、『アレ倒すと処刑される』っつーんだろ。アンタたちは手を出さず、アタシらだけでアンヤを倒したら、どうなるんだ?」
「私たちが攻撃するわけじゃないから、まず『処刑』みたいなのは誰もされないわ。だから、アンヤさんを倒してくれるんだったら御の字よ。それでもしばらくしたら復活するみたいだから、長い目でみたら一時凌ぎな感じにはなっちゃうけどね。それに……そもそも、何人かで囲んで棒で叩いて倒せるような、ヤワな相手じゃないわ。腕に自信があるみんなでも、さすがに難しいんじゃないかしら」
「仮に一時凌ぎだったとしても、アンヤを倒して、この竜星群を終わらせる意味は大きいですね。アルトマーレを守ることには、変わりありませんから」

「囲んで叩く……か」

「どうせグレンさんは、ケンカをされたいだけ……」
 ハナは、グレンが珍しく真剣な表情をしているのに気付く。
「……ではないようですわね」
 その表情には、つい最近見覚えがあった。ホタルが「めいそう」をしているときの顔と、とてもよく似ている。ただのガサツで乱暴なキュウコンの顔ではない。今のホウエン地方の在り方に一石を投じている、番長連合総代の顔だ。

「何かお考えがあるようですが……話しかけてもよろしいでしょうか?」
「ん? なに気い遣ってんだよ、気持ちわり。アタシなりの『役割』を果たそうって考えてたんだ。まあ、ケンカはケンカだけど」
「アンヤを倒す策が、何かあるのか?」
 ホタルも、グレンの考えに興味を示す。

「もうすぐラティたちが来るっつってたよな。しかも、王様直々っつーんだから、数人どころの数じゃねーだろ」
「お子さんの溺愛っぷりは凄まじいらしいから、数十か……それ以上になるかもしれん」
「もともと火力があるラティたちだ。そんだけの数がいれば、アンヤに勝てるんじゃねーか?」
「ラティ王国の火力に頼るということか。なるほど、それは一理ある。ラティ王とも相談することにはなるが、ぜひ検討しよう」

「大勢でアンヤさんに挑戦しようっていうの、すっごくおもしろいわね。今までこういうときって、他のポケモンさんはみんな、竜星群に怖がって逃げ出しちゃうのよ。誰かが協力してくれるなんて、初めてだわ。みんなの恐れ知らずの団結力、全力で応援しちゃう」
「ただ、敵の強さがまだわかんねー。ちゃんとあっちの戦力や戦法を把握して、勝てる準備しっかりしてから、カチコミすんぞ」

「グレンさんの『役割』、楽しみにしておりますわ」
「ああ、そっちはそっちでがんばれよ」

「では、そろそろ出発しよう。まず、チオンさんにアンヤ圏外まで逃れてもらうの基本とし、できることならラティたちの力を借りてアンヤを倒す。この二面作戦で、難局を乗り切るぞ」

――

Calendar
7/11 ラテアとラテオがアルトマーレの砂浜に落下
7/17 イチが乗っていた船が沈む
7/18 ホタルたちがホウエンからアルトマーレへ出発
7/19 城の一室でミツ側近がイチ側近に災厄の発動を提案
7/21 アルトマーレの港町に到着し酒場で盛り上がる
7/22 漁村でラテアとラテオが復帰
7/23 災厄が発動 / ホタルたちがチオンジェンと出会う
7/24 決着のバトルとフタの戴冠式の予定

Comment
チオンジェンがボールに収まらないのは……当時のボールは性能が低く、一部の伝説系のポケモンは収めることができない……という想定です。

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 第二十二話 乙女心がだいばくはつ