ゆとりるのはてなブログ

ポケモンのダブルバトルで遊んだり、このゆび杯を主催したり、小説を書いたりしてます・w・b

しっぽさまとアルトマーレの災厄 〜 第十五話 焼け野原こんがりボディ地方


 第十五話 焼け野原こんがりボディ地方

 空からの竜星群を受け続けるアルトマーレの城。強固な岩壁も少しずつえぐりとられ、城自体が倒壊するのも時間の問題だ。

「竜星群、むっちゃ降ってるな」
 王位継承三位のミツが、無惨な姿となった城を見上げる。
「土砂降りですね」
 深紅のモンスターボールを持った商人は、諦め顔で応える。

「竜星群って、とくこうが下がって少しずつ弱まっていくんじゃなかっけ」
「勢力を維持したまま、北上していますね」
「北上なんかしてないだろ。むしろ場所的には停滞だ」
「うーん……バチンウニの歩く速さくらいは、動いてませんかね」
「そういう問題じゃない。現実逃避するな」
「はい、すみません」

「あと、城下町のあちこちで、むっちゃ暴れてるポケモンもいるな」
「ヤバい。逃げましょう」
「そうそう、ああいうやつ。頭に丼を載せてる変なのが、こっち来てる」
 商人はミツを誘導し、走り始める。
「あれ、私たちを探してるんですよ。無理やり一ヶ所に集めて災厄を起こしたから、怒ってるんです」
「逃げるんじゃなくて、その赤いボールで捕まえる予定じゃなかったっけ。暴れてる災厄ポケモンのうち、どれか一匹でもボールに収めれば、それで竜星群が止むと」
「それが、なかなか捕獲クリティカルが出なくて……」
「捕獲くり……あんだって?」
ポケモンたちのレベルが上がってるんです、きっと」

「とりあえず、捕まえる計画は無理ということだな。これ……このままだとどうなるんだ?」
「一ヶ月続いて、島中が焼け野原になります。あの竜星群から逃げようと、災厄ポケモンたちが島中を駆け巡る。災厄ポケモンを追って、竜星群も島中を駆け巡る。こうして、焼け野原こんがりボディ地方の完成です。できあがったのがパルデア地方こちらになります」
「わーおいしそう! ほのお技が無効で、ぼうぎょも上がるなんて、信じられなーい……って、やかましいわ!」
「はい、すみません」

「しかし、災厄ポケモンたちにとっても、あの竜星群って逃げたいものなんだな」
「そうみたいです。竜星群が当たって、イテッてなってるのもよく見ますし。あ、ほらあんなふうに」
「だったら、災厄ポケモンにお願いして、散り散りになってもらうのはダメなのか。一ヶ所じゃなくなれば、竜星群も止むんだろ。災厄ポケモンたちも助かるし、我々も助かるし、一石二ポッポでは?」
「それも難しいですね。彼らは、私たち人間に対して、とても怒ってるんです。『よくも勝手に集めて竜星群呼びやがったなコノヤロー』みたいな感じです。なので、今はぜんぜん言うことを聞いてくれません。むしろ『竜星群で人間たちが痛い目みればいい』とまで思っているんじゃないでしょうか。平時なら、仲良くしてくれる子もいるんですけどね」

「じゃあ、あの竜星群の出どころを止めれないのか? 自然災害のようにも見えるが、『災厄ポケモンを追う』みたいなことも言っていただろう。こちらの言うことを聞かせたり、できないのか」
「竜星群の主は、引っ込み思案な伝説ポケモン……だと私たちは考えています。正直なところ、正体はさっぱりわかってないんですけどね。商売上、調べる意味も薄いですし。いずれにしても、我々の手に負えるモノではありません」
「出どころも打つ手も無しか。パルデアのときは、どうやって収拾したんだ」
「パルデアでお取引させていただいたときは、竜星群の振り始め……ちょうど今のような折に、パルデアの王様にネタバラシしたんです。先日お売りしたコレは災厄ポケモンなので、『ゲットする特別なボール』と再発防止用に『未来永劫に封印できる資材』をさらに買いませんかと。なかなかご購入を渋られたので、被害がどんどん拡大していきましたが……最終的には両方ともお買い上げいただき、収拾することができました」
「思ってたよりも、むっちゃエグい商売だったわ」
「商売にエグいもサッパリもないのは、ミツ様もご存知でしょう。パルデアの王様が『操り人が災厄を止めた』と公表されているのは、見栄でしょうね。『カネで解決した』よりも、よっぽど建前がいいですし。私たちとしても、そうやって事実をぼかしていただいた方が、次の商売がやりやすくて助かります」

「ん……でも、災厄ポケモンたちを『未来永劫に封印』したんなら、なぜまたココで暴れているんだ?」
「ミツ様なのでさらにネタバラシしますが、災厄ポケモンは何匹もいるんです。ひょいひょい見つけられるものではありませんが、在庫が……言える範囲ですと『数匹ずつ』はいます。あ、もちろんこの辺りのお話は、内密にお願いしますね。私たちも『災厄ポケモンを購入された』というミツ様の『印』を頂戴していることを、ゆめゆめお忘れなきよう」
「もちろんだ。もはやこうなってしまった以上、私がどう騒ごうが意味は薄いだろうがな。フタのせいにする計画も、練り直さなければならない」

「これ、ここにある最後のオリジンボールですけど、ダメ元で投げてみます?」
「お、いいのか。前々から、操り人の真似事をやってみたいと思ってたんだよな」
「投げるボールも通常のモンスターボールと違って特別仕様ですし、投げる相手も国を滅さんとする災厄ポケモンです。ミツ様の初陣に相応しいかと」
「ヨイショされても、この後に及んで払えるカネはないぞ」
「商人としての性で申しあげたまでですので、お気になさらず。今回のこの有様でこれ以上お代を頂戴するなんて、滅相もございません」
「あ、外れた」
「最初はそんなものですよ、ささ逃げましょう」
「そこは、ヨイショしてくれないんだな」
「のんびりお話ししているように見えるかもしれませんが、けっこうカツカツなんです。城下町の港にある私たちの船まで、急ぎましょう。竜星群も沖合までは及びませんので、静まるまでの一ヶ月、そちらへ避難します。他にも一緒に避難されたい方がいらっしゃれば、船に乗ってからお伺いしますので、ひとまずは」

――

「スピードスター!」
ひかりのかべ!」
 降りかかる無数の竜星群から街を守ろうと、ラテアとラテオは必至に技を放つ。しかし、防ぎ損なった竜星群の断片が、城下町の建物に直撃する。
「あのふってくるやつ、ぜんぜんとまんないよー」
「わ……でっかいのくる。アレちょうだい!」
「うん! てだすけ!」
「ミストボール!」
 姉弟のとっておきの一撃が、竜星群の塊を砕く。しかし、その飛び散った破片が、家々の壁に衝突する。
「こんなのむりだよー」
「あきらめないでよ、バカラテオ! 助けてくれたジッジさんたちに、恩返しするんでしょ……っと、またでっかいのきた!」

「ねっぷう!」
 新たな竜星群の塊が、予期せぬ炎に瞬く間に包まれる。そして破片の一つも残すことなく、灰になって消え失せた。
「ったく……勝手に飛び出して、泣き言いってんじゃねーよ」
 キュウコンの姿のグレンだ。
「まぁ……その度胸は、褒めてやってもいいけどな」
「バンチョーさん!」
「かっこいいー!」

「恩返しも素晴らしいが、自分の身も大事にしてほしいな」
「この竜星群の数では、わたくしたちでも対応しきれませんわ。人間のみなさんの避難を優先した方がよろしいかと」
 続いて、人に化けた姿のホタルとハナも駆けつける。
「おじさん!」
「おばさん!」
「おば……お子様の仰ること……お子様の仰ること……」

――

 Calendar
7/11 ラテアとラテオがアルトマーレの砂浜に落下
7/17 イチが乗っていた船が沈む
7/18 ホタルたちがホウエンからアルトマーレへ出発
7/19 城の一室でミツ側近がイチ側近に災厄の発動を提案
7/21 アルトマーレの港町に到着し酒場で盛り上がる
7/22 漁村でラテアとラテオが復帰
7/23 災厄が発動
7/24 決着のバトルとフタの戴冠式の予定

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 時代考証的に、技・特性・道具の名前以外では、なるべくカタカナ言葉を使わないようにしています。ポケモントレーナーのことを「操り人」と呼んでいるのは、ポケモン映画「ルギア爆誕」のオマージュです。

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 第十六話 おねえさんが剣でザーン